トネリコの樹の下で

物理と音楽と時々水泳。オペラに関する話題が中心です。

ラインスドルフ盤『ワルキューレ』(ワーグナー)

①音盤情報
『ワルキューレ』 (ワーグナー作曲)

 ジークムント: ジョン・ヴィッカーズ
 ジークリンデ: グレ・ブロウエンスティーン
 ヴォータン: ジョージ・ロンドン
 ブリュンヒルデ: ビルギット・ニルソン
 フンディング: デイヴィッド・ウォード
 フリッカ: リタ・ゴール 、他

 ロンドン交響楽団
 指揮: エーリヒ・ラインスドルフ
 録音: 1961年9月、ロンドン、ステレオ(アナログ/セッション)

情報はHMVより。結構安く買えるみたいですね。

②はじめに
たぶん3回目の鑑賞。前回のヴィッカーズつながりでもう1盤。

どうしても同時期のショルティとWPhによる全曲録音の陰に隠れてしまいますが、こちらもラインスドルフとLSOによるDecca正規録音です。
ニルソンを除きショルティ盤とキャストの被りもないため、この時期の裏名盤といった印象。
全般的に声楽部の残響がやや大きめなため、それが気になるところは無くもないですかね。

③指揮・オケ
名匠ラインスドルフは非常に色彩鮮やかで明朗な音作り。ずっしり重厚なワーグナーをご所望の場合を除けば、とっても聴き易く、万人におススメできます。
LSOもとってもストレートに音が鳴っていますので癖がありません。

④歌手
見事な歌手陣がまた聴きどころ。
ショルティ盤やベーム盤と多くの正規盤が存在するニルソンのブリュンヒルデですが、これが最も若い頃の正規録音かと思います。その中で恐らく最も端整な歌唱に仕上がっており、表現力もさることながら彼女の鋭くも澄んだ美声を再確認できるものです。

ジョージ・ロンドンのヴォータン、彼のワルキューレ全曲をステレオの高音質で聞けることに感謝。個人的な所感ですが、フェルディナント・フランツなどに続く伝統的なヴォータン像をこの時代に受け継いだのは彼じゃないでしょうか。(ホッターは当時にしても現代にしても特異的な存在だと思います)。
実のギッシリ詰まった極めて男性的で朗々と響く声がまずもって素晴らしい。大振りではないですが練られた表現も流石。

ジークムントのヴィッカーズ、彼の最良の歌唱のひとつを聞くことが出来ます。これまた適切な表現かは分かりませんが、彼のジークムントにはオテロが重なります。英雄的でありながらどこか悲劇を隠し切れず、また単純でない内面を示唆させる歌唱。ただカッチョいい、ただパワフルなだけではないジークムントの最たる例と言えます。

また特筆すべきはゴールのフリッカ。彼女のフリッカは58年のバイロイトでも聞くことが出来ますが(これも絶唱)、ここではステレオで楽しめます。前述の残響が彼女の声を楽しむ上でややネックではあるのですが、それでも極妻系フリッカとしては最良の歌唱を聴くことができます。
同系統のクローゼ(フルヴェン('54)盤)は流石にオルトルード過ぎ、リポヴシェク(サヴァリッシュ盤)は大好きですがこれもちょっと悪魔的すぎる気もする、ということでゴールに行き着きます。彼女の声の醸し出す色気が、強く叫ぶ箇所でも過剰にキツさを感じさせず、ちょうどよい極妻感を楽しむことが出来ますよ(笑)。

ブロウエンスティーンのジークリンデはこの時代の常連で、柄が大きくなくややリリックなジークリンデ。個人的には柄の大き目のリンデが好みではありますが、ブリュンヒルデとの組み合わせを考えるとこれもアリ。

ウォードはあまり有名な歌手ではないと思うのですが、コヴェントガーデンやバイロイトで活躍したバスらしく日本語Wikipediaもあります。有名どこだとショルティ新盤リゴレットのモンテローネ伯爵でしょうか。指揮と一体化したような音楽を引き立てる歌唱。やや軽めながら朗々と響く美声で、もう少し大きな役でもまた聞いてみたいと思ったり。

ワルキューレたちにも特に不満なし。
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他盤に比べれば知名度は落ちますが、皆がそれぞれに魅力を発揮している本作の裏名盤です。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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セラフィン盤『オテロ』(ヴェルディ)

① 音盤情報
『オテロ』 (ヴェルディ作曲)

 オテロ: ジョン・ヴィッカーズ
 イァーゴ: ティト・ゴッビ
 デズデーモナ: レオニー・リザネク
 エミーリア: ミリアム・ピラッツィーニ
 カッシオ: フロリンド・アンドレオーリ
 ロデリーゴ: マリオ・カルリン
 ロドヴィーゴ: フェルッチョ・マッツォーリ 、他

 ローマ歌劇場管弦楽団&合唱団
 指揮: トゥリオ・セラフィン
 録音:1960年7~8月、ローマ歌劇場、ステレオ(アナログ/セッション)

情報はアマゾンHMVをもとにしました。

② はじめに
名指揮者たるセラフィン、そして名イァーゴたるゴッビ、それぞれにとって唯一のスタジオ録音です
同時期にカラヤン盤という名盤があり、ゴッビについても前年の伝説的な東京ライブが超有名で、セラフィンについても2年前のライブ録音(デル=モナコ、カペッキ、カルテリ出演)がそこそこ知名度ありかつ名演なため、話題に上ることの少ないちょっと可哀想な音盤という印象です(^^;;)。
が、中身は見逃すには勿体ないものでして、さらに正規スタジオ録音なので音も良いというおまけ付き。

③ 指揮・オケ
セラフィンの指揮はゆったりどっしりといった感じで、普段のイメージとは多少異なるかもしれません。非常に長い息遣いながら音楽が停滞しない棒さばきは、さすがセラフィンといったところでしょうか。

一方、例えば冒頭はスタジオ録音のわりにはバラついている箇所が少なからずあり、特に金管のズレがあちこちで悪目立ちしていたように思います。

④ 歌手
まずはゴッビのイァーゴ、ライブさながらの味付けを楽しめます。ここまで純粋悪なイァーゴはゴッビならではですし、彼の独特な声はアンサンブル中でも決して埋没しません。乾杯の歌や大活躍の2幕ももちろん良いですが、4幕去り際の"No"がまた強烈。ここまで憎たらしいイァーゴを他に知りません。

ヴィッカーズがまたアクの強い、陰りを持ったオテロを演じています。カラヤン新盤は声が荒れすぎていて好みじゃないのですが、ここでは暗いドラマティコたるヴィッカーズの良さがふんだんに楽しめます。実直そうながら確かに人間不信に陥りそうな悲劇的オテロ。

リザネクのデズデーモナ、彼女の伊モノとしては今まで聞いた中で一番良い。彼女の歌心が随所で発揮されており、全く違和感無く彼女の丁寧な表現を聞くことが出来ます。他の伊国ソプラノに比べれば幾分暗い声ではありますが、ここでは周りが周りなので寧ろ取り合わせとしては良いかと。

脇役・合唱に不足なし。
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ゴッビは勿論のこと、ヴィッカーズとリザネクの重厚な歌唱も素晴らしいですし、彼らを統率するセラフィンも聞きモノという名盤です。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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メト・ライブビューイング2016-17:『ばらの騎士』

ライブビューイングなので「実演感想」かどうか微妙なところですが。

①公演情報
『ばらの騎士』 (R. シュトラウス作曲)

 オクタヴィアン: エレーナ・ガランチャ
 元帥夫人: ルネ・フレミング
 オックス: ギュンター・グロイスベック
 ゾフィー: エリン・モーリー
 ファニナル: マルクス・ブリュック
 マリアンネ: スーザン・ネーヴェス
 ヴァルツァッキ: アラン・オーク
 アンニーナ: ヘレネ・シュナイダーマン
 歌手: マテュー・ポレンツァーニ 、他

 メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
 指揮: セヴァスチャン・ヴァイグレ
 演出: ロバート・カーセン
 録画: 2017年5月13日

日本語のページはここですが、出演者情報等詳細はMetのページの"Read Program"→"May 13"から。

②はじめに
映画館でオペラが見れる「ライブビューイング」による観劇。実は今期の『トリスタンとイゾルデ』(ラトル指揮でステンメとスケルトンが主演)も見ていたのですが、感想に書き起こしてはいません。これも良かったです。
映画館なので言っちゃえばDVDやBDで観るのと似ているのですが、外国での直近の公演を、大画面・大音量で集中して、また手軽に見れるこの環境は、お金と時間を費やす価値があると思います。
まぁ正直なところ、録音のせいか劇場のせいか機械ノイズが気になったりするなど、完璧な環境とは言えませんが、それは目を瞑りましょう。

カーセンの新演出、20世紀初頭を念頭に置いた派手派手しくもどこか退廃的な舞台でした。3幕における読み替えが少々刺激的な節もありますが、全幕通じて楽しめる演出かと。その3幕のR18っぽさも、"きれいな話"に逃げない感じで割と好きです(ラストの重唱の時は気が散るのでそこは微妙ですが)。

③指揮・オケ
ヴァイグレの指揮はワーグナーに比べれば中庸に寄ったオーソドックスな演奏。各楽器間の重なり合い、テンポの綱引きをコントロールしていたのは見事。(ここらへんが大変だと幕間に語っていた気がします)。脂の適度にのった演奏。

③歌手
なんといっても本公演で元帥夫人役・オクタヴィアン役から引退することを公言しているフレミングとガランチャ。彼女らへの歓声が割れんばかりでした。今回の録画日が千秋楽だったのもあり、今まで私が観たなかで一番盛り上がってたカーテンコールでした。

フレミングはそこまで好きな歌手ではないのですし、声的にも容姿的にも衰えがあるのは言わずもがなですが、ここでの熱演にはただただ平伏すのみ。1幕でのおだやかな悟りから、3幕で見せる感情の高ぶりまで、彼女の元帥夫人の集大成を見せてもらった気がします。

ガランチャがまた圧倒的。演技然り声然り容姿然り、現代最高のオクタヴィアンでした。もうズボン役は若手に託したいとのことでしたが、今後も彼女の歌から目が離せません。演出的にも演唱的にも、本公演で1人を挙げるならガランチャでしょう。

グロイスベックは前のメスト映像盤に引き続いての登場、上二人にも負けないブラボーを貰っていました。ウィーンに続いてメトでも絶賛された彼のオックスは、もはや現代一と言ってよいのではないでしょうか(溺愛)。
道化的な愛すべきおじちゃんではなく、精力逞しい尊大な門閥貴族といった"嫌な"役作り。メスト映像盤と似たような解釈ですが、こちらは粗野な成分が多めか。歌唱はどちらも変わらず素晴らしいですが、声量としては今回の方が出ていた(or よくマイクに入っていた)ように感じました。

モーリーも上記三人に負けていません。高音が非常に綺麗に響いています。
ブリュックは声としてはなかなか。ただ演出のためか、あまり好感の持てるパパでは無かったですね。
ポレンツァーニの歌手は(結構豪華な配役ではありますが)個人的には普通。

脇役で出色はヴァルツァッキ役のアラン・オーク。早口巧みなその歌唱は、1幕での大量の脇役の中で最も光ってました。

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ヴァイグレの指揮とグロイスベックのオックスを聴くのが主目的でしたが、期せずしてフレミング/ガランチャという当役ラストに触れることができました。
これだけ盛り上がった公演なのだし、ぜひとも販売されてほしいなーーーと思います。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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ヴェルザー=メスト映像盤:『ばらの騎士』 (R.シュトラウス)

①音盤情報
『ばらの騎士』 (R.シュトラウス作曲)

 元帥夫人: クラッシミラ・ストヤノヴァ
 オックス男爵: ギュンター・グロイスベック
 オクタヴィアン: ソフィー・コッホ
 ファーニナル: アドリアン・エレート
 ゾフィー: モイツァ・エルトマン
 マリアンネ: ジルヴァーナ・ドゥスマン
 ヴァルツァッキ: ルドルフ・シャッシング
 アンニーナ: ウィープケ・レームクール
 警部: トビアス・ケーラー 、他

 ウィーン国立歌劇場合唱団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 指揮: フランツ・ヴェルザー=メスト
 演出: ハリー・クプファー
 収録: 2014年8月8-14日、ザルツブルグ祝祭大劇場

購入元はこちら

②はじめに
NHKでも放送されていたザルツブルクにおける最新の『ばらの騎士』。
クプファーの非常に美しい演出・舞台が非常に印象的です。聞いても見ても美しい劇というのが素晴らしい。

③指揮・オケ
メストとWPhは余裕を感じさせる演奏。クプファーの演出と合わさって、全体として雰囲気の良い”大人な”演奏でした。

④歌手
ストヤノヴァとグロイスベック、この二人の現代っぽさが、演出や指揮とマッチしたものであることも重要な点でしょう。
ストヤノヴァはかなり自立した、悩みつつも逞しく生きる女性を演じています。歌唱も立ち振る舞いも立派で、大人な元帥夫人。
グロイスベックのオックス男爵は、精力溢れる30台、といった感じ。従来の「豪快でちょっと間抜けなスケベおやじ」とはまた違った役作り。これは、グロイスベックの真っ直ぐで黒光りする声の響きと、演技の巧さ・整った容姿があるからこそ出来るものなのでしょう。

コッホのベテランらしい板についたオクタヴィアン、エルトマンの可愛らしいゾフィーも上の二人に劣らぬ歌唱だと言えます。
エレートのファーニナルをはじめとした脇役たちも穴が無く、とくにそのエレートはパパ役がよく似合ってますね(笑)。

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ストヤノヴァとグロイスベックをはじめとした充実の歌手陣と、メストとクプファーの美しくも大人な演奏・演出を楽しめる映像です。
グロイスベックが大好きな私としては来月に上映されるMetのライブビューイングも楽しみです。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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カラヤン('51)盤:『ジークフリート』(ワーグナー)

①音盤情報
『ジークフリート』 (ワーグナー作曲)

 ジークフリート: ベルント・アルデンホフ
 ブリュンヒルデ: アストリッド・ヴァルナイ
 さすらい人: シグルド・ビョルリング
 ミーメ: パウル・キューン
 アルベリヒ: ハインリッヒ・プフランツル
 ファフナー: フリードリッヒ・ダールベルグ
 エルダ: ルース・ジーベルト
 森の小鳥: ヴィルマ・リップ

 バイロイト祝祭管弦楽団
 指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン
 録音: バイロイト祝祭劇場、1951年8月13日

情報はワーグナーの音盤情報に関して詳しくまとまっているサイト様より。
私が聞いたのはWALHALL盤ではなくMYTO盤です。

②はじめに
戦後バイロイト、カラヤンが参加したのは51年と52年。51年にマイスタージンガーと指環、52年にトリスタンを振っています。ほとんどがCD化されています。ありがたいことです。

③指揮・オケ
このころのカラヤンのライブ録音は、オケへの手綱はしっかり保ちながらライブ感たっぷり。
後年の彼のオペラに見られる人工的な印象は殆ど無く、カラヤンのオペラを苦手に思っている方にこそ聞いてもらいたいかも。

④歌手
聞きどころはアルデンホフのジークフリート。ヴィントガッセンの影に埋もれてしまった名テナーの内の一人で、確かに表現の複雑さこそ彼に劣るものの、アルデンホフは力のある声で若々しいキャラを最後まで演じきっています。元気有り余ってて、たびたび音が高めになっているのはもはやご愛敬でしょう(笑)。
最後の2重唱が聞きもの。特にその最後の音をオクターブ上げている録音を、これ以外に私は知りません。
本来、安定して出せるならここはブリュンヒルデと同様ハイCで締めるのがベターだろう、と個人的には思っています。ただ一般的に、延々と3幕まで元気いっぱいに歌ってきて、最後になって登場したブリュンヒルデと40分張り合ってきた2重唱の最後の最後、普段ヘルデンテノールが出さないハイCをカチッと決めるというのは不可能に近い、とも思います。
実際、アルデンホフもちゃんと決まってはいません(はじめは当たってると思うけど、最後には音がずり落ちてしまった)ので、ものの本などでは酷評されいます。しかし私は、ここでの彼の挑戦に大きな拍手を送りたいと思います(^^)/。

お相手のヴァルナイは初バイロイトながら素晴らしく、かつまだ若い時期なので声も無理なく瑞々しい。50年代後半の彼女よりこのころのほうが声としては好きですね。

S.ビョルリングもまたホッターの影に隠れてしまった実力者。やや直球勝負すぎる気もしますが、声質と威力はさすが。
キューンはこの時代の常連らしく、安定した素晴らしさ。当時の大家たるプフランツルもよし。
ダールベルグはこれ以外知らないですが、エコーのせいで正直良くわからないっすw。ジーベルトは録音のせいもあるだろうけど、印象薄か。リップの小鳥は瑞々しくていいですね。
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バイロイト録音ではマイナーなものですが、"53年より前の指環"にかんする素晴らしい記録であり、ファン必聴盤でしょう。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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シッパーズ盤:『マクベス』(ヴェルディ)

①音盤情報
『マクベス』 (ヴェルディ作曲)

 マクベス: ジュゼッペ・タディ(タッディ)
 マクベス夫人: ビルギット・ニルソン
 バンクォー: ジョヴァンニ・フォイアーニ
 マクダフ: ブルーノ・プレヴェディ
 マルコム: ピエロ・ディ・パルマ
 侍女: ドラ・カッラル
 医師: ジュゼッペ・モレッシ

 指揮: トーマス・シッパーズ
 ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団
 1959年録音

情報はタワーレコードさんより。

②はじめに
ここまでこっそり、独系のドラマティック・ソプラノによるマクベス夫人を収集し(ひっそり特集し)てきたわけですが、ここでひと区切り。順にリザネク、ヴァルナイ、ゴルツ、メードルときて、ここではニルソンです。

③指揮・オケ
シッパーズのガツガツと歯切れよい棒さばきは、初中期ヴェルディのひとつの理想形でしょう。
聴いてて清々しい演奏です。

④歌手
歌の聴きどころその1はタッディによる、人間味溢れるマクベス。よい意味で最も一般人的で、最も共感できるマクベスです。それでいて美声だし技術や表現も確かだし、文句ないですね。

聴きどころその2は、プレヴィターリのマクダフのアリア(かっちょいい)、更にその後のデ・パルマとの短い二重唱(いいアンサンブル)です。多くのテナー達が名唱を残してますが、この録音も他に引けをとりません。

フォイアーニは地味ではありますが、手堅く締めていて好印象。
合唱もシッパーズの指揮通りのキビキビしたもので○。

ただ問題のニルソンはちょっとなぁ。。。2つめのアリアとか部分的にはよい一方、全般的には透き通りすぎてて毒気が足りないかと。当然彼女なので譜面上はほぼ問題なく歌われているんですが。
やはり声の強さだけではないってことですね、この役は。彼女にエルザの録音はあれどオルトルートの録音がない理由が分かる気がします笑。
また、独系ソプラノの演奏は皆そうですが、転がしはちょっと辛そうです。
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ともかく全体としては楽しめる盤です。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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ヤング盤『神々の黄昏』 (ワーグナー)

①音盤情報
『神々の黄昏』 (ワーグナー作曲)

 ブリュンヒルデ: デホラ・ポラスキ
 ジークフリート: クリスティアン・フランツ
 ハーゲン: ジョン・トムリンソン
 グンター: ローベルト・ボルク
 アルベリヒ: ヴォルフガンク・コッホ
 グートルーネ: アンナ・ガブラー
 ヴァルトラウテ: ペトラ・ラング
 第1のノルン: デボラ・ハンブル
 第2のノルン: クリスティーナ・ダミアン
 第3のノルン:カーチャ・ピーヴェク
 ヴォークリンデ:ユン・リー=ハ
 ヴェルグンデ: マリア・マルキーナ
 フロスヒルデ: アン=ベス・ソルヴァング

 ハンブルク州立歌劇場管弦楽団、合唱団
 指揮: シモーネ・ヤング
 録音:2010年10月12,14,17,21日、ハンブルク州立歌劇場

情報元はこちら

②はじめに
ヴァイグレ盤に続き近年の指環ライブ録音であるヤング盤を。
残り数種のライブ最新盤もそのうち書きたいものです。

さすが最新盤だけあって高音質、オーディエンスノイズも殆どなし。

③指揮・オケ
ヤングとハンブルク・フィルは躍動感のある演奏。

ヤングの指揮はテキパキと音楽を纏めながらも、聞かせどころを逃さないものです。まさに劇場叩き上げの名手腕といった感じて、安心感と緊張感の同居した名演奏だと思います。

④歌手
ポラスキのブリュンヒルデを聞くために再生したわけですが、まさにそのポラスキが圧倒的。図太くないながら最後まで破綻しない強靭で硬質な声。それに加え声がコントロールされ、表現がきめ細かい。最後はややお疲れだったとは言え、(ヤングのナイスフォローもあり)終始説得力のある歌唱でした。

現在はブリュンヒルデを歌っているペトラ・ラングがヴァルトラウデ。パワーでごり押している印象はありますが、切迫感の伝わる語りでいいと思います。
以前マイスタージンガーのエヴァで聞いたガブラーのグートルーネ、キャラにあっててよし。ノルン、ラインの乙女たちも問題なし。

フランツのジークフリートは流石に歌いなれていて、また表現も行き届いているようで2幕3幕は聞かせてくれる。ただ朗々と歌ってほしいプロローグから1幕にかけては物足りなさを感じます。
トムリンソンはリズムの崩れや発音がベタつきを(特に最近)感じるので知名度ほど好きな歌手ではないのですが、ここでの悪役然とした存在感はやはり素晴らしい。1幕のモノローグや2幕の終盤は流石っす。
ボルクのグンターもなかなかで、特に2幕最後は気合い充分。最近よく名を聞くW.コッホの演技派アルベリヒもなかなか高水準。合唱も問題なし。
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ヤングの指環の残り三作は未聴なのですが、今から聴くのが非常に楽しみです。
また、すっかりポラスキのファンになってしまいました。意外と録音が少ないのですが、バイエルンでの『影の無い女』とか映像で出ないかな・・・。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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パタネ独語抜粋盤:『ファウスト』(グノー)

①音盤情報
『ファウスト(マルガレーテ)』 より抜粋 (グノー作曲)

 ファウスト: ニコライ・ゲッダ
 メフィストフェレス: クルト・モル
 ヴァランタン: ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
 マルガレーテ: エッダ・モーザー
 シーベル: ウッラ・グレーネヴォルト

 指揮: ジュゼッペ・パタネ
 RIAS室内合唱団、ベルリン放送交響楽団
 1974年発売

なお、本CDの最後には
 指揮: ウィルヘルム・シュヒター、北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団
によるファウストのバレエ音楽が挿入されています。これだけはモノラルです。

情報はNaxosさんより。

②はじめに
独語による『ファウスト』の抜粋版。当作は独語では『マルガレーテ(Margalethe)』と呼ばれます。
内容が内容だけあってドイツでも人気だったようで、独語での録音も複数でている作品です。
抜粋されている曲はリンクに飛んでいただければ分かりますが、聴き所はほぼ入っています。ただ3幕のマルト関係の場面はありません。

独語オペラのスペシャリストたちによる歌唱を楽しむ音盤でしょう。
声の残響に手を加えている感もありますが、別に悪くは働いていません。

③指揮・オケ
基本、声が優先な録音ですので(たぶん)、テンポ遅めで、歌いやすいように演奏しているという印象。
全曲をこの感じでやると過度にベタベタで聞き疲れるでしょうが、抜粋版だしよいかなと。
一方で、最終場面などで緊張感が足りない場面が散見されるのも抜粋盤ゆえの悲しさ哉。

ちなみに管弦楽という意味でしたら最後についているバレエ音楽が一番よかったです。

④歌手
ゲッダは独語でも最良のファウストを聞かせてくれます。
特に高音は絶品で、有名なアリアで聞ける最高音の美しさは麻薬的な中毒性があります。
F=Dのヴァランタンも聞きもので、彼の美声を堪能できます。堅物な感じがキャラにもあっているような。

ここでのモルはちょいとイマイチ。冒頭の1幕重唱、2幕のアリアは期待したほどでもなく、高音もきつそう。
一方4幕のセレナーデは、名手らしい言葉裁き・音符裁きを堪能できる素晴らしい出来でした。(ややオックス男爵っぽいですが笑)。
モーザーも歌自体は悪くない、まぁアリアはやや歌い慣れてない感ありますが。ただ終幕の重唱はちょっと緊張感が足りない気もします。
合唱もきれいに歌っていてGood。
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名歌手をグノーの旋律で聞くことが出来るといういみで、貴重な盤です。


((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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ボルトン映像盤:『イェヌーファ』 (ヤナーチェク)

①音盤情報
『イェヌーファ』 (ヤナーチェク作曲)

 イェヌーファ: アマンダ・ルークロフト
 コステルニチカ: デボラ・ポラスキ
 ラツァ・クレメニュ: ミロスラフ・ドヴォルスキー
 ブリヤ家のおばあさん: メッテ・アイシング
 シュテヴァ・ブリヤ: ニコライ・シュコフ
 村長: ミゲル・ソラ
 村長の妻: マルタ・マテウ
 親方: カーロイ・セメレーディ
 カロルカ: マルタ・ウビエタ

 マドリード王立劇場管弦楽団&合唱団
 指揮: アイヴァー・ボルトン
 演出:ステファン・ブロンシュウェグ
 収録:2009年12月22日、マドリード王立劇場(ライヴ)

購入元及び参照元はこちら

②はじめに
非常に完成度の高い映像作品で、音楽・美術・映像ともに特に付けようの無いものでした。
スカラとの共同プロダクション(たぶん)のようで、シンプルで過不足ない舞台美術はとても美しく感じられます。
また、キャスト同士、キャストと合唱団、指揮者とオケがそれぞれに仲良さそうだったのも印象的です。

日本人的に最大の問題は日本語字幕が無いことでしょう。
歌詞も深く楽しみたい作品ではあるので、そこは少し残念。

③指揮・オケ
ボルトンの指揮は勢いを殺さずグイグイ進めていく明瞭なもの。
この作品、そもそも音楽の情報量が多いと感じているので、こういったすっきりしたものが好み。

④歌手
まず全員が歌・容姿ともに役にピタリなのが楽しい。

ルークロフトは年齢的な面はしょうがないとして、まずかわいらしい見た目。歌い慣れているようで、とってもナチュラルで真実味のある演唱でした。
ある種ピュアなイェヌーファに対し、かなり屈折した愛情表現が求められる裏主役コステルニチカ。それを大迫力で演じたポラスキが、本公演のスターでしょう。風格ある立ち姿とドラマティックな歌、ただ「怖い」だけに終わらせない丁寧な表現と演技。恥ずかしながらポラスキの歌唱をフルで聴くのは初めてだったのですが、名声に違わぬ大歌手であることを思い知らされました。(反省してヤング盤の指環を今聴いてます(笑))。

ドヴォルスキーの暑苦しく一直線なラツァ、シュコフの二枚目ぼんぼんなシュテヴァ。この両テノールが公演のレベルをさらに引き上げています。いい意味で暑い声一本調子なドヴォルスキー、声も芸も達者なシュコフが対照的なのがまた楽しめます。

そのほか脇役たち、合唱もよし。

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この前の新国もよかったですが、この映像盤の完成度にも驚かされました。
日本語字幕がないことを除けば万人にお勧めできる音盤です!


((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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サヴァリッシュ映像盤:『影の無い女』 (R.シュトラウス)

①音盤情報
『影の無い女』 (R. シュトラウス作曲)

 皇后: ルアナ・デヴォル
 乳母: マルヤーナ・リポヴシェク
 皇帝: ペーター・ザイフェルト
 染物師バラク: アラン・タイタス
 染物師の妻: ジャニス・マーティン
 使者: ヤン・ヘンドリク・ローテリング、他

 バイエルン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
 指揮: ヴォルフガング・サヴァリッシュ
 演出:市川猿之助、装置:朝倉摂、衣裳:森英恵
 収録:1992年、愛知県芸術劇場(ライヴ)

購入元及び参照元はこちら

②はじめに
日本にゆかりのある公演です。
名匠サヴァリッシュとバイエルンが、かの市川猿之助と手を組んで、しかも愛知県芸術劇場の杮落し公演として上演したもの。

私は歌舞伎には全く触れたことが無いのですが、そんな私でも違和感なく、また美しさを感じることのできる演出。少なくとも日本人にとっては、自然と親しみを持てる演出だろうなと思います。(これが欧米の人にどう映るかはわかりませんが)。
どうしても映像にするとやや暗さを感じますが、歴史に残る名演を楽しませてくれる貴重なDVDです。

③指揮・オケ
シュトラウス・サウンドを楽しませてくれる名コンビ。
サヴァリッシュの『影の無い女』はCD盤含めちょっと緩さを感じる箇所(特に2幕の皇帝のモノローグ)があるのですが、楽譜が過不足鳴っていると思うで不満には至らないかな、と。

④歌手
同じく映像盤として名高いショルティのものに比べると歌手の有名度は劣りますが、中身は負けず劣らず。

そのショルティ盤でも圧倒的な存在感を見せたリポヴシェクはここでもキレっキレ。やはり当たり役。
更に皇后のデヴォルが絶好調。上から下までコントロールされており、特に高音の安定感は聴いていて心地よい。ベテランらしい行き届いた表現もよし。おしろいや着物も似合ってますし、大きな動きは無くとも所作や表情がその葛藤を訴えてきます。65歳まで第一線のドラマティック・ソプラノであり続けた彼女の代表盤ではないでしょうか。
使者のローテリングは名脇バス。脇役ながら実質「カイコバード役」でもあるという要な役どころ、かっちりとした歌がぴたり嵌まってます。

ザイフェルトの皇帝も安定しており、流石の歌唱。演技は粗いのですが、それを補って余りある歌です。
タイタスは優しさと抱擁感あるバラクを、個性は少ないながらじんわり聞かせてくれます。
主要歌手の中だとマーティンの歌がやや単調気味。ま、声は出てるし2幕ラストは締まってたし、悪くはないでしょう。

そのほかも合唱含め、穴は無し。

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ショルティ盤と比べても甲乙つけがたい名演です!


((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

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