FC2ブログ

トネリコの樹の下で

オペラに関する感想メモが中心です。

ヨッフム盤:『後宮からの誘拐』 (モーツァルト)

①音盤情報
『後宮からの誘拐(後宮からの逃走)』 (モーツァルト作曲)

 セリム: ロルフ・ボイゼン
 ベルモンテ: フリッツ・ヴンダーリッヒ
 コンスタンツェ: エリカ・ケート
 ブロンデ: ロッテ・シェードレ
 ペドリッロ: フリードリヒ・レンツ
 オスミン: クルト・ベーメ 、他

 バイエルン国立歌劇団管弦楽団、合唱団
 指揮: オイゲン・ヨッフム
 録音: 1965年、ステレオ

CDの情報から。

②はじめに
通して聴くのは初めて。独系バスが活躍する盤を全然聴いてないことを反省したので連続で色々聴いてます。ベーム映像盤を観たのは8割この予習のためだったり。
全曲としてはあまり聞いてこなかった作品ですが、聴いてるうちに嵌ってきてしまいました。

③指揮・オケ
ヨッフムとバイエルンは伸び伸びとした演奏。もう少しきびきびした演奏も多いですが、これはこれで心地よいものです。

④歌手
やっぱヴンダーリヒは唯一無二。他の独リリックテナーよりも甘みと力強さがあり、後のラテン色あるテナーよりもモーツァルトの音楽や形式と親和する、欠点の見当たらない歌唱。ベルモンテは活躍のわりに出番が過剰な感が否めないわけですが、ヴンダーリヒだとそれが寧ろプラスになるんだよなぁ。

名手レンツもベスト。2ndテナーとしてどういう存在感を出すか難しいところがある役ですが、レンツの陽気な役作りがいまのとこ一番好き。

この時代のオックス男爵やオスミンと言えばベーメで、ぶっとい独バス声で道化役を演じとばすのが彼の魅力(あとカスパールも有名ですが全曲は未聴)。ほぼ同世代のフリックやグラインドルという名手もそれぞれに魅力的ですが、王道のど真ん中を往くのはベーメでしょう。

一方の女声がこの盤のネックとなってしまいます。
ケートは彼女の悪いところ(ビブラートとか)が目立っている印象で、登場のアリアはけっこう残念。2幕アリアの方はまぁまぁですが、彼女はどちらかと言うとブロンデの方が合ってるでしょう。
ブロンデ役のシェードレの方は悪くない。が、厳しく言ってしまうと、競合ひしめくこの役の録音の中で特筆するほどかと言われると微妙。

-----
欠点もありますが、鉄壁の男声3人とヨッフム&バイエルンは自信をもってお勧めできる名盤です。



((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

スポンサーサイト

PageTop

東京・春・音楽祭:グレの歌 (2019年4月14日)

①公演情報
『グレの歌』 (シェーンベルク作曲)

 ヴァルデマール王: クリスティアン・フォイクト
 トーヴェ: エレーナ・パンクラトヴァ
 農夫: 甲斐栄次郎
 山鳩: 藤村実穂子
 道化師クラウス: アレクサンドル・クラヴェッツ
 語り手: フランツ・グルントヘーバー

 指揮: 大野和士
 東京都交響楽団、東京オペラシンガーズ
 合唱指揮:マティアス・ブラウアー、宮松重紀

公式HPはこちら

②感想
なんか今年、東京で3回も『グレの歌』やるらしいですね(笑)。
あまり聞いてる作品じゃなくて感想は短めに。

大野和士と都響はかなり良かったです。合唱はラストは大迫力でしたが、男声合唱は声部別れたときに目立ってバラつくのが気になりましたかね。

歌手については主役のクリスティアン・フォイクトが、オケの分厚さを考慮しても残念...。体調が悪かっただけな気もしますが、声が全然届いてこなかったせいで音も言葉もよくわからなかったです。
彼の分を他の人が頑張ってた感じでしょうか、それ以外のキャストは素晴らしかった。お相手のパンクラトヴァは初めて聴きましたが、なかなか今後が期待ができる歌手かと。
アクセル全開の甲斐栄次郎、ノリノリな道化師クラヴェッツ、ベテランであるグルントヘーバーの独語語りとみんな◎。

そんな中でも今夜の主役は藤村実穂子でしょう!! 初めて生で聴きましたが、こりゃすごいですわ。
圧巻の山鳩で、声といい表現といい貫禄といい素晴らしかった。昔に比べて少しドラマテッィクになったようで、その声の幅を活かした歌唱でした。来シーズンはウィーンで乳母(『影のない女』)もやるみたいですし今後も目が離せません。

----
藤村実穂子の歌唱を生で聴けたことが、なによりも大満足。
来年の東京春も楽しみです。


((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

PageTop

レヴァイン映像盤:『ドン・パスクァーレ』 (ドニゼッティ)

①音盤情報
『ドン・パスクァーレ』 (ドニゼッティ作曲)

 ノリーナ: アンナ・ネトレプコ
 ドン・パスクァーレ: ジョン・デル・カルロ
 エルネスト: マシュー・ポレンザーニ
 マラテスタ: マリウシュ・クヴィエチェン 、他

 メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団
 指揮: ジェイムズ・レヴァイン
 演出: オットー・シェンク
 収録: 2010年11月、ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場(ライヴ)

情報はこちらより。

②はじめに
本盤初。メモにするまでに結構時間がたってしまったので軽めに。
日本語字幕はなし。

シェンクの演出としてはあまりパスクァーレの金持ち感を強調しない感じ。結婚詐欺感は薄れてますが、老人虐め感は増した気もしますので難しいところ。
とはいえ全体的にはムーティ映像盤よりも好き。なぜならこちらの方が振り抜いたブッファをしているからです。

③指揮・オケ
レヴァインの何を振らせても外さない実力は称賛すべきですな。

④歌手
変に真面目過ぎず、スターがそれぞれはっちゃけているのが観てて楽しい。

ノリーナに典型的な声質ではないながら、ネトレプコが若く知的なお嬢さんを演じており◎。やはりブッファだと彼女の「舞台力」が一層際立ちます。
ポレンツァーニは2幕アリアはそこそこでしたが、3幕は爽やかでよかった。

クヴィエチェンはベストで、声もそうですし演唱・演技がこの詐欺師にピッタリ。
デル・カルロのドン・パスクァーレもベストかな。純粋に上手いのを当然として、前の『アルジェのイタリア女』でも書いたように常に話を楽しんでいるように聞こえるキャラが、この役にはピッタリです。
この二人による痛快な早口2重唱は必聴。アンコールも入ってます!

-----
過度なリアリティを求めずにスター歌手が喜劇を演じているのがたのしい盤です。


((以上感想は素人耳による非常に個人的なものですのでご注意ください))

PageTop

東京・春・音楽祭: The 15th Anniversary Gala Concert (2019年4月12日)

①公演情報
東京・春・音楽祭 The 15th Anniversary Gala Concert

 チャイコフスキー: 《エフゲニー・オネーギン》 第3幕 より
  ポロネーズ
  グレーミンのアリア「恋は年齢を問わぬもの」
 ハイドン: 《天地創造》 第2部 より 第22曲 今や天はこの上なく輝き
 R.シュトラウス: 《エレクトラ》 より 「ひとりだ!なんと悲しいこと」
 ワーグナー: 《神々の黄昏》 第1幕 より 「私の言うことをよく聞いてください!」
 ヴェルディ: 歌劇 《オテロ》 第2幕 より オテロとイアーゴの二重唱

 ワーグナー:
  《ニュルンベルクのマイスタージンガー》 第1幕への前奏曲
  《さまよえるオランダ人》 第2幕より 「我が子よ、いらっしゃいをお言い」
  《タンホイザー》 第2幕より 歌の殿堂のアリア「おごそかなこの広間よ」
  《ローエングリン》 第3幕より グラール語り「はるかな国に」
  《パルジファル》 第3幕より 「その通り!ああ!哀しくもつらいこの身」
  《ワルキューレ》 第2幕より 「それならば、永遠の神々はもうお仕舞なのですか」
  《ワルキューレ》 第1幕より 「寝ているのですか?客人よ」~終幕まで

 ソプラノ: ミーガン・ミラー
 メゾ・ソプラノ: エリーザベト・クールマン
 テノール: ペーター・ザイフェルト
 バリトン: ジョン・ルンドグレン
 バス: イェンス=エリック・オースボー

 指揮: フィリップ・オーギャン
 管弦楽: 読売日本交響楽団
 会場等: 東京文化会館大ホール、2019年4月12日

公式はこちら。ただし曲順に関しては、実際の演奏順に直しています。

②はじめに
楽しみにしていたガラコンサート。

曲選は今までに東京春でやって来たものから構成したようですが、なかなかに渋い。
まず指環の抜粋でヴァルトラウテとフリッカは出すけど、ヴォータン(告別)もジークフリート(鍛冶の歌)もブリュンヒルデ(自己犠牲)も出ないプログラムとか許されるんか、と(^^;)。独メゾ好きなので、俺得でいいのですが。
そして前半は人ではなく曲が先に決まってたみたいなので、歌手がなかなか無理してた感もあります。まぁ、全くヴェルディっぽくない『オテロ』はそれはそれで面白かったのでいいですが(笑)。仕方ないながら、アイン・アンガーが急病でキャンセルした影響が大きいのでしょう。グレーミンは勿論、あと『天地創造』も彼が歌う予定だったのでは(当初の発表が『天地創造』⇒ポロネーズ⇒グレーミンの順だったことから推測)。

結構席は空きがあったのがちょっと残念。皆さん『オランダ人』で色々使い果たしたのでしょう。
がっつりめの対訳は配られましらが、正直暗くて全然読めなかったです(苦笑)。

③指揮・オケ
指揮とオケ、どっちも良かった! 指揮は歌手にゆっくり歌わせるべくゆったりめ、多少ずれてもすぐ修正という手慣れたもの。読響の弦は音がちゃんと飛んでおり正直このまえのN響よりずっと良かった。
オネーギンのポロネーズはちょっともっさりだったけど、マイスタージンガーの前奏曲は伸び伸びしててよかった。

④歌手
曲ごとでなく歌手ごとに見ていきます。

主演というか主賓のザイフェルト、『オランダ人』というよりガラのために来日したようなものなので気合いたっぷり。細かいところは衰えてたり横綱歌唱だったりしますが、この歳まで美しさと勢いを声に保っているのは驚愕。やっぱローエングリンとジークムントは彼がマイベストですな。名乗りの歌はラスト痺れましたし、ジークムントは歌い口がうんまい。
そしてやはりクールマンはめちゃいい。ガラでヴァルトラウテとフリッカを歌うなんて彼女じゃなきゃ許されないでしょう(笑)。彼女のうまさと人気を再認識。

ミラーは新国『死の都』のときよりよかった。さすがにエレクトラは辛そうでしたが(彼女のせいじゃないですが)、ジークリンデなんてなかなか立派でザイフェルトと渡り合ってました。
ルンドクレンは天地創造は全体的に「ん??」て感じですし、イヤーゴは伊語が「ん??」でしたが、これも8割彼のせいじゃないでしょう。といいつつイヤーゴはかなり巧みに歌っており、アンフォルタスはなかなか良かった。今度は彼の本領発揮できる役でもっと聴いてみたいものです。
オースボーもグレーミンは慣れない感じでしたがダーランドはお手のもの。今日はちょっと高音辛そうでしたが、ここまで深く響くバス声を楽しませてもらえれば十分満足っす。

-----
実はガラコンサートを生で聴いたのは初めてでしたがいいですね。拍手でガンガン途切れるので気が楽ですし(←そこ)。



((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご留意ください))

PageTop

東京春音楽祭『さまよえるオランダ人』(2019年4月7日)

①公演情報
公演情報は公式HPをご参照ください(さぼり)。

②はじめに
今年も行ってきました。東京春音楽祭のワーグナーシリーズ。
これまで『パルジファル』『タンホイザー』以外は全部聞いてますが、『ジークフリート』と並んでトップの出来だったかと思います。

しかーし、相変わらず背景の映像に関しては進歩なし。前回のローエングリンよりはましでしたが、不自然なところにちょいちょい目がいってしまい気が散ります。一緒に行ってる父と「ここまできたら意地って感じだよねwww」と苦笑いしていました。

③指揮・オケ
アフカムは初めてでしたが勢いがあってなかなかよかったのではないでしょうか。3幕の合唱三昧のシーンとかはちょっとごり押している感じもありましたが、これぐらいの方が本作はいい気もします。
N響もいつも通りでしたが、個人的には低弦の響きが不足していたように感じました。いつもそんな気はするんですが、作品の特性上そう感じたのかな。

④歌手
なんといってもターフェルすげぇという感想。元来彼の声はワーグナー向きではないと思いますが、昔より声が少し硬くなったからか、貫禄からか、映像で観た時よりずっとよかったです。まず声が轟くのなんの、そして表現付けが巧いのなんの!! 彼のちょっと崩す歌い方から化け物ちっくなオランダ人像が浮かんできます。いやはやあっぱれ。

急病のアイン・アンガーの代役となったオースボー、綺麗に響く独バス声で◎。変に爆声過ぎないダーラントなので、ある種の狂言回し的な立ち回りに見えて新鮮でした。
メルベートは出だしバラードは不安定かつ「ビブラートきっつ」て感じでいまいちでしたが、その後重唱からは本領発揮。柄の大きいゼンタでしたが、これはこれで他の役とがっぷり四つとなるので迫力あります。特にラストは結構な鬼門だと思うのですが、ばっちり決まってて素晴らしかった。

ザイフェルトに関してはまず「よくエリック役のために日本まで来たな」という(笑)。御歳65歳とは思えない声の凛々しさ。エリックがしっかりしてるとラスト3重唱は大迫力ですな。
イフリムはそこそこ、ツワロフツカはごわごわビブラートで好みじゃないっす(マリーはそんな出番ないんでいいですが)。

今回は合唱もすごかった。舞台だったら絶対に乗せられないだろうレベルの人数を投入しており、特に男声は超大迫力。これだけやってくれると3幕前半が愉しい。

-----
すばらしい演奏会でした。特に生ターフェルはすごかった!!
来年の『トリスタン』のキャストが気になるところです…。



((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご留意ください))

PageTop

ベーム映像盤:『後宮からの誘拐』 (モーツァルト)

①音盤情報
『後宮からの誘拐 (後宮からの逃走)』 (モーツァルト作曲)

 コンスタンツェ: エディタ・グルベローヴァ
 ベルモンテ: フランシスコ・アライサ
 ブロンデ: レリ・グリスト
 ペドリッロ: ノルベルト・オルト
 オスミン: マルッティ・タルヴェラ
 セリム: トマス・ホルツマン

 バイエルン国立歌劇場合唱団、バイエルン国立歌劇場管弦楽団
 指揮: カール・ベーム
 演出: アウグスト・エファーディング
 収録: 1980年4月、バイエルン国立歌劇場

買ったのが昔なので全然覚えてないですが、たぶんHMVから買った気がする。但し私が持っているのは日本語字幕なし。

②はじめに
映像で観るのは初めて。セリムと言う役がある以上映像で楽しむのも乙ですね。
ベルモンテの2幕アリアのNr.15が3幕冒頭に回されており、Nr.17がカットされています。

演出はプロットに忠実で、台詞も台本に沿ったものなので話を追うにはもってこい。日本語字幕入りもあるみたいのでそちらをぜひ。

③指揮・オケ
ベームとバイエルンの響きやよし。最晩年のベームと言うとテンポが緩むことがあるとよく言われますが、個人的にはそんな感じませんでした(ただ序曲はややそんな気もした)。てか86歳とかなので、指揮してることの方が異常な気もしますがw。

④歌手
歌の観点ではアライサが一番。ターミノと並び脳ミソすっからかんテノール役ことベルモンテに、彼の暑苦しいノーブル声が合います。行動力以外に全然よいところのない割に歌う箇所は多いベルモンテですが、アライサが歌うとなんとなくいい奴な気がしちゃいますね。彼のモーツァルトの中では一番の適役では。
オルトは歌だけ聞くと他にやや聴き劣りしないこともないですが、演技含め○。2m超のタルヴェラを背負うのはビックリしました。
そのオスミンのタルヴェラは名声違わぬ存在感なのですが、ここでの歌は万全とまではいかない気が。

グルベローヴァは特に2幕の大アリアが聴きもの!! ちょっと低音が出てないのを補って余りある歌の旨味で、流石は稀代のコンスタンツェ歌いですな。
グリストも流石スーブレットの大御所。結構な歳だった筈なのに、それでも瑞々しさを感じさせる歌です。

ただ劇と言う意味ではセリム役のホルツマンが筆頭。オペラ史上屈指のできた人であり名言だらけなのに哀しい哉、台詞のみのセリム。映画・舞台俳優のホルツマン、彼の静かな立ち姿が劇を作っていると言っても過言ではないでしょう。ひたすらに美辞麗句が並べられるフィナーレが逆に物悲しい...。

-----
映像で観るとセリムの立ち位置に改めて気付かされます。
[2019年4月22日、ちょっと加筆]


((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご注意ください))

PageTop

パッパーノ映像盤:『セビリャの理髪師』 (ロッシーニ)

①音盤情報
『セビリャの理髪師』 (ロッシーニ作曲)

 アルマヴィーヴァ伯爵: フアン・ディエゴ・フローレス
 フィガロ: ピエトロ・スパニョーリ
 ロジーナ: ジョイス・ディドナート
 バルトロ: アレッサンドロ・コルベッリ
 バジリオ: フェルッチョ・フルラネット
 フィオレッロ: チャンガン・イム
 ベルタ: ジェニファー・ライズ=デイヴィース
 アンブロージオ: ブライアン・セコンブ
 仕官: クリストファー・ラクナー
 書記: アンドルー・マクネアー

 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
 指揮: アントニオ・パッパーノ
 演出: パトリス・コーリエ&モッシュ・ライザー
 収録:2009年7月、コヴェント・ガーデン、王立歌劇場(ライヴ)

どこで買ったかは覚えてないけど情報はこちらより。

②はじめに
まぁこの布陣を見たら買わざるを得ないですよね。本盤初鑑賞。
インタビュー含めてかなり充実しているのですが、日本語字幕はないのが英語が得意でない私なんかには多少ネック。

本編・おまけ中でも細かく説明されてますが、初日にディドナートが公演中に滑落して骨折してしまった(当日は松葉杖で頑張ったとのこと)ため、本映像中では車椅子で上演してます。にもかかわらず、また舞台は割とシンプルにもかかわらず極めて優れたブッファとして上演されており、優れた演者は多少のハンデや小道具の有無をものともしないということがよくわかります。

なかなかキャストを集めるのが難しい作品ですが、そんななかでCD含めてもトップと言うべき出来になっているかと思います。

③指揮・オケ
パッパーノとコヴェントガーデンは信頼しています。序曲はちょっとまとまりが足りない感じはしますが、本編はさすがなもの。

④歌手
時代を代表する歌手たちが集結しており、また全員がちゃんと喜劇してるおかげでとても纏まりがよい。

やはり大アリアが入ってくると、冒頭のアリアと含めて伯爵が俄然主役として輝いてきますな。フローレス本人も「クソ疲れたラストに大アリアは正直つらい」みたいなこと言ってますが、ここでの完成度はそれを感じさせないもの。
ディドナートは超美声というわけではないのですが、歌の技術がすこぶる高いのと、歌も演技もやり過ぎ無い中庸さ・バランス感がやはりすんばらしい。当時もうベテランの域に入っていたにも関わらず、ゴツかったりおばさん臭いロジーナにならないのは彼女ならではです。

名手コルベッリによる自然体なバルトロ、大御所フルラネットのぶっきらぼうで威力あるバジリオも文句の出ようがない。もうちょい軽妙な方が好みながら、スパニョーリの押しが強いフィガロも巧いし旨いし◎。脇役もなかなか。

-----
日本語字幕がないことと舞台がやや地味なのをが気にならなければ、現代のベスト盤でしょう。
ヴァイケルト映像盤がちょいと古くなってきましたし、現在最もオススメするのはこの盤です。



((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご注意ください))

PageTop

ゲルギエフ映像盤:『ランスへの旅』 (ロッシーニ)

①音盤情報
『ランスへの旅』 (ロッシーニ作曲)

 コリンナ: イルマ・ギゴラシヴィリ
 メリベーア侯爵夫人: アンナ・キクナーゼ
 フォルヴィル伯爵夫人: ラリーサ・ユージナ
 コルテーゼ夫人: アナスタシヤ・ベリャーエワ
 騎士ベルフィオーレ: ドミートリー・ヴォロパエフ
 リーベンスコフ伯爵: ダニール・シトーダ
 シドニー卿: エドゥアルド・ツァンガ
 ドン・プロフォンド: ニコライ・カメンスキー
 トロンボノク男爵: ヴラジスラフ・ウスペンスキー
 ドン・アルヴァーロ: アレクセイ・サフィユーリン
 ドン・プルデンツィオ: アレクセイ・タンノヴィツキー
 ドン・ルイジーノ: アンドレイ・イリュシニコフ
 マッダレーナ: エレーナ・ソムメル
 モデスティーナ: オリガ・キチェンコ
 アントーニオ: パヴェル・シュムレーヴィチ

 マリインスキー劇場管弦楽団&合唱団
 指揮: ワレリー・ゲルギエフ
 演出: アラン・マラトラ (パリ・シャトレ座とマリインスキー劇場の共同制作)
 収録: 2005年12月10、15、16日 パリ、シャトレ座におけるライヴ収録

こちらから。

②はじめに
映像で観るのはひさしぶり。本盤初めて。とても水準高いですし日本語字幕もついてるので超オススメ。

若手を中心にコミカルに動く舞台で、演技もうまいし容姿も合ってるし文句の付けようがない。客席というか客そのものまで使った演出は本作ぐらいの規格外の作品だからこそできる愉しみでしょう(他の映像もこういう演出してたような)。オケと指揮者はピットではなく、舞台上の奥で演奏しています。それを生かした小ネタも愉快。来日公演で観た人がうらやましいなぁ。

本盤でマイナスの点をあげるなら、ちょっとカットがあることでしょうか。レチとか細かいところはまぁいいんですが、シドニー卿のアリアの中間部以降がばっさり切られているのは残念無念。

③指揮・オケ
ゲルギエフのロッシーニってどうなんだ??と思ってましたが、推進力とちょこちょこした細かい感じが合ってました。舞台上で演奏しているのもあり音が厚すぎるところもある気もしますが、舞台上も14人いるのでこれはこれでいいかと(笑)。
シドニー卿のアリアではフルートの人ががんばってましたねww。

④歌手
いろんな個性の人がいて、メインから脇役まで凹凸ないという事実がマリインスキーのレベルの高さを如実に表してますね。大コンチェルタートの完成度の高いこと高いこと。

特筆するならシトーダ(リーベンスコフ)とカメンスキー(ドン・プロンドフォ)でしょうか。シトーダはとにかく歌のコントロールがうまい!!基本はメリットを思わせる響きの強い声なんですが、これに頭声をうまくつかって軽やかに転がす技術を併せ持っているのが驚愕で、キクナーゼとの2重唱はただただスゴイの一言。カメンスキーについては多彩な声質を使い分けつつ愛されキャラを崩さない歌で、他の名手とはまた違った魅力にに溢れています。間の抜けた鼻にかかる地の歌声と、白雪姫のオトボケみたいな容姿・演技が合わさった極めてユニークな才能の歌手に感じました。

他のキャストをソプラノ勢から行きます(多い...)。キャラが魅力的で勢いのあるユージナ(フォルヴィル伯爵夫人)、声はやや平らながら歌も演技も巧さで魅せるベリャーエワ(コルテーゼ夫人)、もうちょい軽やかな方が役にはいい気もするけどセリア的な響きの特徴的なギゴラシヴィリ(コリンナ)。このソプラノはみな響きが硬質な人たちなので、肌触りソフトなアルト声のキクナーゼ(メリベーア公爵夫人)がまた際立ちます。脇では特にキチェンコ(モデスティーナ)は女声の中でもっともコミカルで魅力的!!
シトーダとはまた違う軽さを纏ったヴォロパエフ(ベルフィオーレ)、カットのせいで存在感が薄めながら"陰キャ"らしい愚直なツァンガ(シドニー卿)、この中だと地味ながら渋い歌を見せるウスペンスキー(トロンボノク)、ソロがスペイン民謡のみなのがもったいなすぎるほど声が轟いていたサフュエーリン(ドン・アルヴァ―ロ)と、男声は女声以上にそれぞれがキャラ立ちしており愉しいこと愉しいこと。脇ではタンノヴィツキー(ドン・プルデンツィオ)のギャウロフを思わせる響きの良い東欧バス声が印象大。
合唱は音楽的な点のみならず、一人ひとりみんながちゃんとブッファしてたのが素晴らしい。

----
正直そこまで期待してなかったのですが、180度裏切られてしまった...。
「オール・マリインスキーのロッシーニ~??」と前の私のように思わずに、ファンなら欠かさず見るべき映像です!!



((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご注意ください))

PageTop

ラインスドルフ映像盤:『ナクソス島のアリアドネ』[初演版] (R.シュトラウス)

①音盤情報
『ナクソス島のアリアドネ』[初演版、『町人貴族』の劇中劇のみ] (R.シュトラウス作曲)

 アリアドネ: クレア・ワトソン
 バッカス: ロバート・ナジ
 ナヤーデ: ベニータ・ヴァレンテ
 ドリアーデ: ユーニス・アルバーツ
 エコー: キャロル・ボーガード
 ツェルビネッタ: ベヴァリー・シルズ
 ハレルキン: ジョン・リアドン
 スカラムッチョ: ジェームズ・ビリングス
 トゥルファルディン: マルコム・スミス
 ブリゲッラ: ジョン・フェランテ
 語り部(ジュルダン): アンドリュー・レイバーン

 ボストン交響楽団
 指揮: エーリッヒ・ラインスドルフ
 収録: 1969年1月7日、ボストンシンフォニーホールでの演奏会形式ライブ、モノラル音声/カラー映像

DVDの背面を元に作成。日本語字幕なし。

②はじめに
演奏会形式の演奏で、シュトゥットガルト1912年初演版の米国初演だったんだとか。初演版はナガノ盤のみ聞いたことあります。ガーディナー映像盤もそのうち観てみたい。
本盤は『町人貴族』の部分はなしで、劇中劇のみ。ただ最後のところに語り部の一言(英語!)が入れてました。

先日、ボストン響を現地で聴く機会がありそこの物販で購入。手に入りやすい盤ではないし値段も普通だったので、記念ということで買っちゃぃました。
映像はカラーですが音はモノラルで、正規盤の割にはそんな音よくないです。が、まぁ69年収録の映像なので推して知るべきか。

③指揮・オケ
ラインスドルフは基本早めのテンポ。もうちょい落ち着いてる方が好みですが、初演版はそういう楽譜なのかもしれないのでなんとも。
ボストン響については可もなく不可もなく。あまり彼らの持ち味の出る作品でもない気もする。(時代は違うけど先日ボストンで聴いたチャイ4はとっても良かった)。

④歌手
初演版ということで、先ずはツェルビネッタのシルズを挙げるべきでしょう。ライブ音源で聴くと一層恐ろしいアリアで、彼女もさすがに最高音のF6#(HiFis)だけはカットしてましたが、それ以外はきっちり歌いきってました。改めて「そりゃ改訂の際に調を下げることにもなるわな」と(笑)。
正直独ものをメインなソプラノではないですし、歌い慣れてなくまた歌いやすくもないアリアでしょうが、それを(そこまで)感じさせないシルズは流石名声に違わぬ歌手。実はアリア以外にも出番が改訂版より多く、そこでも舞踏一座を引っ張ってました。

大アリアに関しては、初演版は中盤以降あまりに技巧的な気がして、改訂版のほうがトータルでは好みではあります。
とは言いつつ、改訂版と分岐するあたりからの「おおぉぉぉ、キタ━━(゚∀゚)━━ !!!!!」ってワクワク感、絶え間ない超絶技巧によるスリリングさ、2回の最高音F6#や幾度となく出てくるD6~E6、気が遠くなるようなカデンツァなどなど、他では味わえない要素満載なのでこれはこれで楽しいですけどね(笑)。これらが楽譜にそのまま書いてあるといのが末恐ろしい。

ワトソンのアリアドネはたおやかさと情感豊かさを併せ持っておりナイス!
ナジって初めて聞く名前だなと思ったけど、メトでセカンドテナーとして脇役(comprmario)として活躍した人らしく、聴いたことある盤もチラホラ。主役級の張りのある声でバッカスにぴったりな熱演で、認知してなかったことを反省しましたm(_ _)m。

その他の人はこれまた知らない人だらけで、まぁ正直なところ可もなく不可もなく。ただ舞踏一座はもうちょっと頑張ってくれないと、中盤までの男女バランスがとれないかなぁ。

-----
殆ど演奏されず、音源が3つしかない1912年初演版ですので、とっても貴重です。
皆さんもぜひ1912年版のツェルビネッタの大アリアを聴いて、ドキドキワクワクしてくださいwww。



((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご注意ください))

PageTop

ロペス=コボス盤:『アルジェのイタリア女』 (ロッシーニ)

①音盤情報
『アルジェのイタリア女』 (ロッシーニ作曲)

 イザベッラ: ジェニファー・ラーモア
 リンドーロ: ラウル・ヒメネス
 ムスタファ: ジョン・デル・カルロ
 タッデオ: アレッサンドロ・コルベッリ
 エルヴィーラ: ダリーナ・タコワ
 ズルマ: ラウラ・ポルベレッリ
 ハリ: カルロ・ショーソン

 ジュネーヴ大歌劇場合唱団、ローザンヌ室内管弦楽団
 指揮: ヘスス・ロペス=コボス
 録音: 1998年

日本語情報が無いので、CD背面などから持ってきました。

②はじめに
ラーモアのイザベッラをスタジオ録音でも聴きたくて。リンドーロの2つ目のアリアは両方入っており、完全全曲盤とのこと。

Spotifyで聴いた僕が言うのもアレですが、日本語の情報少なすぎません?? まぁそういう音盤を気軽に聴けるのがストリーミングの良さですが。

③指揮・オケ
ロペス=コボスとローザンヌ室内管は、『セビリャ』同様に片肘張らない音とさりげないサポート。相変わらず室内管のよさがいい塩梅に出ています。
恥ずかしくも知らなかったのですが、ロペス=コボスは去年逝去していたとのこと。ただただ合掌。

④歌手
やっぱラーモアはマイベスト。若さたっぷり才気煥発なベルカンザと両翼で、大人の色気と軽快さの塩梅がイザベッラにドンピシャ。スタジオながら遊び心もあり、特にコルベッリとの重唱の愉しさったら!

そのコルベッリとはカンパネッラ映像盤に引き続き名コンビ。この役もこの人にとどめを差しますな。

ヒメネスは気品はあるけどちょっと間の抜けた印象なので、伯爵やラミーロよりも個人的には合ってると思います。所々リズムが怪しい気もしなくもないが、全体的には◎。
ハリ他も合唱もなかなか。

ある意味でデル・カルロのムスタファが一番の収穫でした。常にニコニコなムスタファで、この他愛ないふざけあいに自ら楽しんで参加してるように聞こえ、とても新鮮。恐らくそのちょっと揺れる/ちょっと息の抜ける声とあまり根詰めない感じがこの印象を生むのでしょう。
ブッファの「いじられ」役って、(大抵悪いことの罰とはいえ)観てて心が痛くなることも少なくない訳ですが、今回のデル・カルロのような姿勢だと安心して楽しめますね。

そういう意味で役としてもキャスト自身としても、皆がこのブッファを楽しんでいる、そんな録音でした。

-----
名録の多い作品ではありますが、総合点は本盤が1位かもしれません。
あとCDではジュリーニ盤、ベルティーニ盤、シモーネ盤、映像ではレンゼッティ盤が残っているのでそのうち聴かねば(結構残ってるな…)。



((以上は素人耳による個人的な感想ですのでご注意ください))

PageTop